GX基本方針ならびに原子力政策に対する意見

2023年01月18日

神奈川県生活協同組合連合会
代表理事会長 當具 伸一

2022年12月、日本政府は、従来の原子力政策を転換する内容を含んだ4つの文書、「GX実現に向けた基本方針」、「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」、「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」、「原子力利用に関する基本的考え方」を公表しました。その内容は、既設原子力発電所の運転期間の延長、次世代革新炉の開発・建設など原発の積極活用を図るものとなっており、これまでの「可能な限り原発依存度を低減する」としていた従来の政府方針を転換するものです。
2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故の経験をふまえて、神奈川県生活協同組合連合会は、「原子力発電に頼らない社会をめざして、省エネルギー再生可能エネルギー推進」の取組を、消費者・組合員とともに進めてまいりました。原発の積極活用を進めようとする今回の方針は、消費者・組合員の願いに反するものであることから、下記のとおり、見直しを求めます。

1.今回の報告書に示された原子力発電の積極活用を図る方針は、従来の政府方針を転換するものであり、エネルギー基本計画の内容とも整合しません。広く国民が議論に参加できる機会を保障し、国民的な合意の上で原子力利用の方向性を確認すべきです。

今回の方針は、既設原子力発電所の運転期間の延長、次世代革新炉の開発・建設など原発の積極活用を図るものとなっています。
政府は2011年の東日本大震災における福島原子力発電所事故以来、原発の新増設や建て替えには言及していませんでした。エネルギー基本計画でも「再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」と記載しており、原発の積極活用を図る今回の方針は従来政策の転換と言えます。
問題なのは、今回の方針転換が、GX実行会議を中心に限られたメンバーによって、4か月という短い期間で策定されたということです。東日本全体が壊滅する可能性すらあった大惨事を経験した日本において、原発は国民全体の重要な関心事です。原発に関する政策については、丁寧に情報を開示し、広く国民が参加できる機会を保障したうえで、国民全体の合意を持って決定されるべきです。

 

2.気候危機回避には2030年までの排出削減が重要であり、原子力や火力発電に依存せず、再生可能エネルギーの主力電源化を脱炭素社会に向けた主軸に据えるべきです。

気候危機のリスクを低減するためには、2030年までの温室効果ガスの排出削減が決定的に重要だとされています。
今回の方針では、脱炭素社会の実現に向けて、火力発電所における水素・アンモニアの混焼や次世代革新炉の開発・建設が掲げられていますが、、両者ともに2030年という期限には間に合いません。コストと人材は限られていることから、原発や火力発電に固執せず、再生可能エネルギーの主力電源化を脱炭素策の主軸に据えるべきです。
あわせて、第6次エネルギー基本計画で36~38%とされている再生可能エネルギーの電源構成を、国際水準である50%まで高めることを求めます。

 

3.安全性への懸念から原発の運転期間の延長は実施すべきではありません。

もともと原発は30年ないし40年を設計寿命として建設されています。福島第一原子力発電所の事故後に40年以上の運転を原則として認めない運用にしたことは、技術的事実をふまえた上で、原発依存を低下させるという政策的判断を法制化したものです。
このため、停止期間を含めて60年を超える運転期間を可能とすることは、リスクを高め、老朽化対策などのコストも増大することとなることから見直しを求めます。

 

4.2030年までの排出削減につながらず、リスクとコスト負担を生じさせる次世代革新炉の新設に取り組むべきではありません。

次世代革新炉の新設には計画から少なくとも10年から20年かかり、その間の電力供給やCO2排出削減について何ら貢献することはありません。また、一旦稼働すれば、少なくとも40年の稼働が固定化し、その間のエネルギー政策を縛り続けることで再生可能エネルギー導入の足かせとなる恐れがあるほか、放射性廃棄物の処分や廃炉などで将来世代にリスクとコストを負担させることになりかねません。次世代革新炉の新設は見送り、原発に頼らない政策に転換すべきです。

以上