[神奈川県消団連] 食品ロス削減推進法の成立を受けて
神奈川県消費者団体連絡会
事務局長 小林 正明
「食品ロス削減推進法」が、5月24日、参議院本会議で全会一致可決・成立しました 。
この法律は、食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」を減らすことをめざし、生産から消費までのさまざまな段階で削減に取り組むよう求めています。
また、法律には食品ロスの削減にとどまらず、生活困窮者に食品を提供する「フードバンク」への活動支援を進めることも盛り込まれており、各地の支援団体の期待も高まっています。
私たちは、食品ロス削減推進法の成立を歓迎します。
消費者庁によると、食品ロスの量は日本全体で646万トンに上ると推計されています。その内、事業系廃棄物が約357万トン、家庭系廃棄物が約289万トンを占めます。これは、国民1人あたり、毎日お茶碗1杯分の食品を捨てている量に相当します。
家庭で発生する食品ロスは、大きく3つに分類されます。
食卓にのぼった食品で、食べきられずに廃棄される「食べ残し」。賞味期限切れ等により使用・提供されず、手つかずのまま廃棄される「直接廃棄」。厚くむき過ぎた野菜の皮など、不可食部分を除去する際に過剰に除去された加食部分の「過剰除去」。
これらの食品ロスは、消費者が普段の暮らしの中で意識をすれば減らすことが可能です。
買い物の前に冷蔵庫の中の在庫を確認したり、食べきれないほどの食材を買いすぎないようにすること。すぐに食べる商品は、賞味期限や消費期限の長い商品を選択するのではなく、陳列順に購入すること。また調理のときは、食べられる分だけ作るようにすることや、余った食材を使い切る工夫をすることなどです。
法律の前文では、「世界に栄養不足の状態にある人々が多数存在する中、大量の食料を輸入に依存している日本として、真摯に取り組むべき課題である」ことを明示しています。
日本の1年間の食品ロスは、国連世界食糧計画(WFP)による食糧援助量約320万トンの2倍に相当します。世界には、深刻なうえや栄養不良で苦しんでいる人々は約8億人、5歳未満の発育阻害は約1.5億人存在しています。
また日本においても、7人に1人が「相対的貧困」にあり、母と子のひとり親世帯でみれば半数以上にも及ぶ世界で最も高い貧困率となっています。
本法律は、政府が食品ロス削減の基本方針を策定し、地方自治体は基本方針をふまえて削減計画を策定し、実施することを責務としています。企業の責務、消費者の役割も定め、食品ロスの削減を国民運動として推進していくことを掲げています。
SDGs(国連の持続可能な開発目標)では、1人当たりの食料廃棄を2030年までに半減させる目標を掲げており、法制定は国内での重要な一歩と言えます。
私たちは、世界共通の大きな目標の達成に向けても、食品ロスや貧困、さらには大量生産・大量消費による環境負荷などに消費者としての関心と意識を持ち、一人ひとりがそれぞれ出来ることに積極的に取り組むとともに、活動を広げていきます。