SNSの利用とこころの健康は関連するようです

2021年03月19日
「SNS」、多くの方が活用されている「SNS」。

SNSはソーシャルネットワークサービスの略で、人と人との社会的な繋がりを促進する様々な機能を提供する会員制のオンラインサービスのことですね。
様々なSNSがありますが、何を使われていますか。
利用者数の多い順では、㈰LINE(8,600万人・2020年10月時点)、㈪Twitter(4,500万人・2018年10月時点)、㈫Instagram(3,300万人・2019年3月時点)、㈬Facebook(2,600万人・2019年7月時点)、㈭TikTok(950万人・2018年12月時点)、㈮Pinterest(530万人・2019年8月)
だとか。
LINEが成長を年々続け単独1位をキープし、ています。また2019年内にInstagramは2018年にFacebookを抜きました。
これら急速に私たちの生活に入り込んだSNS。便利になった反面、色々と影響も明らかになってきました。スマートフォンから発するブルーライトの睡眠への影響への懸念もそうです。
このたび東京都健康長寿医療センター研究所の研究グループにより、「SNSの利用状況と精神的な健康との関連」の研究発表が出されました。これまでも対面での会話や電話の頻度も全世代を通じて精神的健康に関連していたことはあきらかでしたが、顔の見えるSNS(LINEやFacebook)や肯定的なイメージのやりとりが生じるSNS(Instagram)は、精神的な健康の維持に役立つ可能性が示され、匿名性と自由度の高いSNS(Twitter)ばその逆の危険性を含んでいる可能性を示唆されています。
私たちの健康は、他の人との関係も顔の見える関係(双方向の関係)が大切であるという事が判ります。

<プレスリリース>

SNSの利用とこころの健康は関連するか?

—LINEの利用とは良好な関連を示すが、Twitterの利用とは負の関連を示すことが明らかに—

発表内容の概要
東京都健康長寿医療センター研究所の桜井良太研究員と藤原佳典研究部長の研究グループは、SNSの利用状況と精神的な健康との関連を検討し、全世代を通じてLINE利用者では精神的健康度が高い傾向にあるが、Twitter利用者では精神的健康度が低い傾向にあることを明らかにしました。
この研究成果は、国際雑誌「PLOS ONE」(3月3日付)に掲載されました。

研究成果の概要
これまでの研究から、他者との交流が我々の健康維持に極めて重要であることが示されてきました。しかしながら、この他者との交流がSNSといったオンライン上の交流であっても有効であるかについては明らかではありませんでした。
そこで東京都内在住の無作為抽出した21,300名を対象に郵送による住民調査を行い、LINE、Facebook、Twitter、Instagramの使用頻度と精神的な健康状態(ウェルビーイング〈精神的な満足感・幸福感:WHO-5という質問票で調査〉、悩み・抑うつ傾向〈K6という質問票で調査〉、孤立感を測定)の関連を調査しました。その際、SNSの利用は「発信」と「閲覧」に分け、それぞれ「週に数回以上利用する」と回答した者を定期利用者とし、精神的健康との関連を検討しました。
研究の結果、8,576名(若年者[18-39歳]2,543名; 中年者[40-64歳]3,048名 高齢者[65歳-]2,985名)から有効回答が得られ、以下の点が明らかとなりました。

  • 6割の高齢者がSNSを利用できる機器を保有しており(主にはスマートフォン)、全世代において一番定期利用者が多いSNSはLINEであった。
  • 若年者ではInstagramの定期閲覧、中年者ではFacebook定期発信、高齢者ではLINE定期利用(発信と閲覧の両者)が良好なウェルビーイングと関連していた。
  • 若年者ではInstagramを定期閲覧、中年者ではLINEを定期発信している者ほど悩み・抑うつ傾向が低い関係が認められた。他方で、両年代においてTwitter定期利用者(発信と閲覧の両者)ほど悩み・抑うつ傾向が強くなる関係が示された。
  • 中年者のTwitter定期利用者(発信と閲覧の両者)および高齢者でTwitterを定期発信している者では孤立感を有している割合が高くなる傾向が認められた。
  • SNS以外のコミュニケーション(対面での会話や電話)が低い者では、全世代を通じて、全ての精神的健康度の指標が悪い傾向が認められた。

 

(A) LINEを定期的に利用している者ではウェルビーイングを測定するWHO5得点が高い傾向があることが分かる。
(B) Twitterを定期的に利用している者では孤立感を抱いている者の割合が高い。
これらはSNS以外のコミュニケーション頻度を調整しても統計学的に意味のある関連であった。
※発表データから作成した表(当該論文では他の形で結果を示しているため、本データは示していない)

研究成果の意義
本研究は1時点の関連性を調べた調査であり、「このSNSを使っていると精神的に健康になる」という因果関係を示したものではなく、SNSの利用頻度別に、利用者の精神的健康度の特徴(SNS利用と精神的健康度の関連性)を示した研究結果であるため、その解釈には注意が必要です。世代間のSNS利用率のばらつきなど等(高齢者層のSNS利用率の低さ)や個別性(SNSの利用目的)を含め、引き続き検証が必要な結果ではありますが、本研究の結果は、顔の見えるSNS(LINEやFacebook)や肯定的なイメージのやりとりが生じるSNS(Instagram)であれば、精神的な健康の維持に役立つ可能性を示しています。他方で匿名性と自由度の高いSNS(Twitter)であればその逆の危険性を含んでいる可能性を示唆しています。またSNS以外のコミュニケーション(対面での会話や電話)頻度も全世代を通じて精神的健康に関連していたことから、バランスのとれたSNS利用が必要であるといえます。

掲載論文
国際科学雑誌「PLOS ONE」(現地時間3月3日午後2時)
Who is mentally healthy? Mental health profiles of Japanese social networking service users with a focus on LINE, Facebook, Twitter, and Instagram
(精神的に健康なのは誰か?LINE, Facebook, Twitter, Instagramに着目したSNS利用者の精神的健康度)

(問い合わせ先)
〒173-0015 東京都板橋区栄町35-2
東京都健康長寿医療センター研究所
社会参加と地域保健研究チーム 桜井良太
電話 03-3964-3241 内線4257
Email: sakurair@tmig.or.jp